【特集】韓国が牽引するアジアの復活。2022年7月~9月の渡航予約動向を分析 INFINI DATA Streamで見る世界 第20回 2022年12月号|特集

このコーナーでは弊社のマーケットデータ分析サービス「INFINI DATA Stream」を利用しINFINI上で行われた空席照会数や予約数のデータを分析し様々な角度から毎月ご紹介して参りました。
今回は帰国前PCR検査撤廃から始まった日本の水際対策緩和や相手国の観光ビザ免除等の影響により大きく動き始めた今年7月から9月の動向をまとめた内容で作成しております。後半ではその中でも勢いを感じる韓国の動向を特集しております。
\目次/
- 全体の動向(対前年比)
- エリア毎の動向
- 今月の特集
✔ 韓国が牽引するアジアの復活 - 総評
玉川大学観光学部教授 中村哲様 - まとめ
- INFINI DATA Streamとカスタマイズレポートのご紹介
1. 全体の動向(直近6か月)
この章のグラフはエリア別に過去6か月の手配月別の推移をお伝えしております。グラフは6か月前の月を基準(1.0)とし空席照会件数と予約件数の直近6ヶ月の推移を示しております。


空席照会件数は全体的に増加しております(図1)。ハワイ・ミクロ・オセアニアエリア及びアジアエリアは4月から約2倍に伸びております。予約件数では全てのエリアが8月には少し停滞があったものの9月以降はまた伸び始めてます(図2)。
2. エリア毎の動向
この章ではエリア毎に空席照会件数と予約件数を以下の通り2種類で分析しております。
①7月から9月に手配された空席照会件数及び予約件数
②9月に手配された今後の出発月別渡航トレンド
2-1. 北米・中南米の動向(除ハワイ)
①7月から9月に手配された空席照会件数及び予約件数
空席照会件数・予約件数共にアメリカ合衆国の好調がけん引。予約に関しては8月は少し停滞があったものの、帰国時の緩和処置等の影響を受け9月手配が復活したことが伺えます。
②9月に手配された今後の出発月別渡航トレンド
このグラフでは空席照会件数、予約件数共に今後の出発月別の件数を示しております。前回報告同様に空席照会件数(図5)は2023年1月まで伸びが拡大しております。コロナ禍での渡航のトレンドとしてはこれまで当月及び翌月までしか動きがない(ビジネス渡航が中心と推察)状況が長く続いておりましたが、数か月先の渡航を意識した動きが表れて参りました。
2-2. ヨーロッパの動向
①7月から9月に手配された空席照会件数及び予約件数
ヨーロッパでは3か月の間空席照会件数、予約件数ともに右肩あがりの状態が続いております。空席照会上位がイギリス、予約上位がドイツというのもこれまでと同じ傾向が続いておりますが特筆すべき傾向としてスペインが上位に浮上して参りました。
②9月に手配された今後の出発月別渡航トレンド
ヨーロッパは秋に向けて空席照会件数、予約取扱い数共に好調な動きをしておりましたが、11月出発以降は下降が見られます。ヨーロッパがオフシーズンに入る事も関係しているのかもしれません。
2-3. 中東・アフリカの動向
①7月から9月に手配された空席照会件数及び予約件数
2-2.ヨーロッパで報告致した内容と似た状況がこの中東・アフリカエリアでも見られます。空席照会件数(図6)では8月出発が多いものの、予約数(図7)では9月出発の予約数が増えてきております。このエリアではトルコ、アラブ首長国連邦共に最終目的地がヨーロッパとなっているケースが多くみられますのでヨーロッパエリア同様9月の予約が増えている動きとなっております。9月以降ヨーロッパ行き渡航が多く予約されている事は今後の明るい材料の1つと言えるでしょう。
②9月に手配された今後の出発月別渡航トレンド
9月操作実績においても10月出発では空席照会件数はアラブ首長国連邦、予約取り扱い数はトルコが一位となっておりますが、このギャップも3か月動向と同様です。
2-4. ハワイ・ミクロネシア・オセアニアの動向
①7月から9月に手配された空席照会件数及び予約件数
空席照会件数では7月操作以降徐々にハワイの件数は下がり始めており、新たにグアムが登場しております。レジャー旅行の目的地がハワイ以外の都市にも拡がり始めてきたものと見て取れます。それでもハワイについては下記9月操作のグラフ(図18)で示しております通り秋~冬(年末年始)の予約数の多さは群を抜いております。
②9月に手配された今後の出発月別渡航トレンド
ハワイ・ミクロ・オセアニアは全体の予約動向(図1)では予約の伸びが低かったエリアとなりますが、ハワイについては空席照会は年末年始需要から再び増加しており、予約件数も数は落ちておりません。また2023年1月よりニュージーランドの予約が伸び始めており3月も増加の動きがあります。
2-5. アジアの動向
①7月から9月に手配された空席照会件数及び予約件数
アジアは海外渡航マーケットにとって今や最も勢いのあるエリアとなりました。弊社の3か月操作月別実績においても空席照会件数、予約件数ともに右肩上りとなっております。特に韓国の伸びは特筆すべき上がり方となっており、空席照会件数においては9月に入って観光ビザの延長に対する期待感とあいまって大きな動きを示しております。
②9月に手配された今後の出発月別渡航トレンド
9月の操作においても空席照会件数は韓国がトップとなっており、また予約件数についても順調に伸びております。
3. 今月の特集
韓国が牽引するアジアの復活
2022年6月よりいち早く観光ビザ発給に踏み切った韓国の空席照会件数、予約件数の動向は目を見張るものがあります。韓国が牽引することで今後アジア全体が復活していく事をに感じさせる内容となっております。
上記の通り空席照会件数、予約件数共に入国側措置の動きと連動した動きとなっております。
6月:観光ビザ発給開始。長く待たれていた観光での入国が可能。
8月:8月限定で観光ビザなし(不要)での入国が可能。
9月:観光ビザなし(不要)入国が10月まで延長が決定。
10月:10/19に11月以降は観光ビザ不要(K-ETA)がリリース。
そして韓国の動向に牽引されるように韓国以外のアジアも徐々に右肩上がりの動きを示しております。
4. 総評
玉川大学観光学部教授 中村哲様
本稿で紹介されているデータは、大きく日本出発の「空席照会数」「予約数」があります。「空席照会数」は渡航先への関心、「予約数」は実際の行動の指標として見ることができます。現時点だけではなく今後1年以内の出発についても示されていますので、この先の状況を見通す参考になるでしょう。
今回は7月から9月の間の空席照会、予約件数の動向が紹介されています。この期間の海外旅行に関する大きな変化は、有効なワクチンの3回以上の接種証明書がある場合は、滞在先出国前72時間以内にPCR検査を受けての陰性証明書を提出することが、9月7日以降に日本に入国する場合に不要となったことです。海外旅行を妨げる外的な制約の1つが緩和されたと言えます。図1・図2から読み取れますように、特に9月以降にハワイ・ミクロネシア・オセアニア、アジアを中心に空席照会・予約件数とも増加が見られます。
ハワイとグアム
前号では、ハワイの予約状況が2022年5月以降に急速に伸びていることに注目しました。Hawaii Tourism Authorityは毎月の来訪者数を公表されていますので、実績を確認してみます。日本市場からの入域者数を見ていくと、2022年の7月から9月の合計は7万5,609人です。2019年の同時期は43万9,243人がハワイに入域していたので、2022年は2019年の17.2%の数字にとどまっています。今号の図18を見ていきますと、10月以降1月まで予約が入っていることがわかります。2019年の水準に今後どの程度近づいていくのか、追いかけていきたいところです。
グアムについてですが、Guam Visitors Bureauの発表によると、2022年7月から9月の入域者数の合計は7,205人となっております。2019年の同時期(18万3,491人が入域)と比べると3.9%の数字にとどまっています。最近、さまざまなプロモーション活動に積極的に取り組まれ、またフライトの復便の動きもありますので、今後の予約状況がどう動くのか注目しております。
韓国
今号の特集は「韓国が牽引するアジアの復活」です。前述のとおり9月には日本帰国前のPCR検査陰性証明についてもワクチン3回接種済の場合には不要となったことに加え、8月以降に次々と韓国入国にかかわる大きな外的な制約が取り除かれたことが反映された結果になっています。韓国の状況については本文にも記載されていますが、「全入国者の隔離義務終了」(6月8日より)、「観光目的入国のビザ免除再開」(8月4日から時限付、11月1日から正式)、「入国前のPCR検査陰性証明の提出義務終了」(9月3日より)、「入国後24時間以内のPCR検査義務が廃止」(10月1日より)、とあるように8月以降に次々と制約解除の動きがありました。これらを受けて、7月から9月における10月出発の韓国への空席照会・予約件数も多くなっていることがうかがえます(図22)。また、図23・図24にあるように8月以降に空席照会、予約の件数が大幅に増加しています。特にCOVID-19に起因する外的な制約のほとんどが解消された10月には、急激な伸びが見られます。
今後は、日本と韓国を結ぶフライトが複便される動きがあります。また為替レートも必ずしも円安ウォン高になっているわけではありません。韓国への旅行をしやすい要因は揃いつつあります。あとは、韓国に行きたい人の海外旅行に対する心理的な不安がどこまで解消され、ポジティブな態度を持つようになるのかでしょう。
懸念する点としては、日本入国の際にPCR検査陰性証明提出不要となるのは「有効なワクチン接種を3回終えた人」に限られることです。2019年に韓国旅行を支えたのは20歳代を中心とする女性でした。しかし、首相官邸の発表によると、20歳代のワクチン3回接種完了率は54.1%にとどまっています(11月28日時点)。韓国入国の制約が減ったとしても、人によっては日本帰国時の制約は依然として残っているのかもしれません。
台湾
アジアの復活ということで、2019年までは多くの日本人が渡航していた台湾を見ておきます。台湾の状況については、 「入境時のPCR検査の陰性証明書提示免除」(7月14日より)はされていましたが、7月から9月の間は制約解除に向けた大きな動きはなく、空席検索、予約件数とも低調な状態が続いています(図19〜22)。ところが、「観光目的入境のビザ免除再開」(9月29日より)、「全入境者に隔離義務終了」(10月13日より)と制約の解除に向けて大きく動き出しました。ただし「7日間の自主健康管理」が求められ、2日に1回の抗原検査を実施する状況は続いています。日本からの台湾への短期の海外旅行は不可能ではありませんが、人によっては他の目的地と比べると厳しい印象を持ってしまうかもしれません。その中で今後どのように変化していくのでしょうか。
7月から9月の間に,海外旅行をめぐる、特にCOVID-19に起因する外的な制約は減少したように見えます。一方で、国によっては円安の状況にあり、海外旅行への割高感もあります。海外旅行の復活に向けた動きを引き続き注視していきたいところです。

中村哲様プロフィール
玉川大学観光学部教授。専門は観光心理学、観光行動論。
2002年4月敬愛大学経済学部専任講師。2010年4月玉川大学経営学部准教授などを経て2017年4月より現職。共著書に『「若者の海外旅行離れ」を読み解く』(法律文化社、2014年、観光学術学会著作賞受賞)など。最近の研究テーマは日本人の海外旅行行動、COVID-19の国際旅行への影響、旅行の阻害要因など。
http://nakamuratetsu.cocolog-nifty.com/blog/profile.html
5. まとめ
今回は20回を迎えた特集として動きに変化が見られた9月単月及び7月~9月の動向をとりまとめる形としました。この期間の大きな動きとしては2022年9月7日午前0時(日本時間)以降、有効なワクチン接種証明書を保持している全ての帰国者・入国者については、出国前72時間以内の検査証明の提出を求めないとのニュースは来るべき本格的な渡航再開に向けて我々の胸を弾ませる大きな出来事となりました。もちろん海外旅行に行きたいお客様も同じだったのではないでしょうか?このニュースの報道があった9月以降各エリアとも空席照会件数を軒並み伸ばしております。
「DATAStreamで見る世界」ではこれらの動向をいち早くキャッチし皆様にお届けして参りたいと考えます。引き続きの配信をお楽しみにお待ち下さい。
また「この方面のこんなデータが欲しい」「自由に検索してみたい」等のご要望がございましたらお気軽に弊社営業にご相談下さい。復活に向けたビジネスチャンスに積極的に弊社データをご活用いただけますと幸いです。
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