ワクチン接種証明書運用開始、対象国の動向は?2021年7月の海外旅行動向|INFINI DATA Streamで見る世界 第10回 2021年8月号|特集

written by:株式会社インフィニトラベルインフォメーション 企画部

このコーナーでは弊社のマーケットデータ分析サービス「INFINI DATA Stream」を利用してINFINI上で行われた空席照会数や予約数のデータを分析し、色々な角度からご紹介致します。第10回 2021年8月号では、「ワクチン接種証明書運用開始、対象国の動向は?2021年7月の海外旅行動向」と題し、ワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)対象国を中心に2021年7月の空席照会・予約データや各国のワクチン接種状況を分析し、海外旅行がいつ頃再開されるのか、どの国に行けるようになるのか、等の視点から最新の動向を探って参ります。

目次

  1. 全体の動向(対前年比)
    ✔ 空席照会数は低調、中東・アフリカ、北米・南米が引き続き好調
  2. 北米・南米の動向
    ✔ 業務渡航、レジャーともにアメリカがリード
  3. ヨーロッパの動向
    ✔ イギリス、フランス、ドイツが好調、予約取り扱い数ではドイツが著しい伸び
  4. 中東・アフリカの動向
    ✔ 空席照会・予約取り扱い共に好調
  5. オセアニアの動向
    ✔ 予約取り扱いは対前年比90%程度ではあるが、厳しい状況は変わらない
  6. アジアの動向
    ✔ 他エリアと比べると近い日付で空席照会がされている
  7. その他地域の動向
    ✔ 非常に厳しい状況が続いている
  8. 世界のワクチン接種状況
    ✔ 日本のワクチン接種率が急上昇している
  9. ワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)対象国の動向
    ✔ まだ目立った動きはない
  10. まとめ
  11. INFINI DATA Streamのご紹介

1.全体の動向(対前年比)

図1:2021年7月の空席照会実績(日本到着を除く/対前年比)

7月は全体的に空席照会数が低調です。各エリアの前年比で見ていくと前月に引き続き中東・アフリカが好調ですが、やっと100%を超える程度になっています。続いて北米・南米エリアが対前年比60%となっていますが、アメリカ行きの需要が牽引し、相対的に伸びているエリアと言えます。

図2:2021年7月の予約取り扱い実績(日本到着を除く/対前年比)

次に7月の予約取り扱い数ですが、全体では前月とほぼ同程度でした。エリア毎の対前年比では中東・アフリカエリア、北米・南米エリアが好調です。ヨーロッパ、オセアニアエリアでも対前年比90%程度となっており、低調な空席照会数と比べると堅調な推移となっています。

2. 北米・南米の動向

図3:2021年7月北米・南米エリアの国別出発月別空席照会数

北米・南米エリアの国別実績を詳しく見ていきます。前月と同様当月出発旅程と8月(翌月)出発旅程に大きな差が付いています。当月、翌月、翌々月出発が多い、というのは引き続き業務渡航や帰国等の需要が中心であることを示唆しています。北米・南米エリアの空席照会数は対前年60%、対前月でも75%程度と、引き続き減少傾向です。しかし12月の空席照会数が少し目立つようになってきました。年末年始の旅行に関する興味・関心が増えてきているものと思われます。

図4:2021年7月北米・南米エリアの国別出発月別予約取り扱い数

次に7月の予約取り扱い数動向です。アメリカ合衆国行きの旅程が幅広い日程で予約されています。12月の予約取り扱い数が目立つようになってきました。他エリアと比べてもかなり突出したグラフとなっており、年末年始のハワイ(ホノルル)旅行への期待の高まりが感じられます。アメリカ合衆国のみに絞って目的地を見てみますと、やはりホノルルが日増しに存在感を増しています。12月、1月出発の旅程では過半数をホノルルが占めています。

図4a:2021年7月アメリカ合衆国行きの旅程の出発月別予約取り扱い数内訳

3. ヨーロッパの動向

図5:2021年7月ヨーロッパエリアの国別出発月別空席照会数

7月に行われたヨーロッパエリア行き旅程の空席照会数です。前月から引き続き直近2-3ヶ月の空席照会が中心ですので、帰国、業務渡航が需要の中心であると思われます。前月までは上位の国にあまり偏りはありませんでしたが、イギリス、フランスの割合が少し高くなってきたように見えます。

図6:2021年7月ヨーロッパエリアの国別出発月別予約取り扱い数

7月のヨーロッパ国別の予約取り扱い数では空席照会の方では引き続きドイツをハブとした旅程が選ばれることが多いようです。当月、翌月、翌々月出発の旅程が中心となっていますので、こちらも業務渡航、帰国を中心とした需要の様です。12月の予約が増えている、といった傾向は特に見えませんので年末年始ヨーロッパ行きのレジャーについてはまだ厳しい状況が続いているようです。

4. 中東・アフリカの動向

図7:2021年7月中東・アフリカエリアの国別出発月別空席照会数

中東・アフリカエリアの国別・出発月別の空席照会数を見ていきたいと思います。8月(翌月)出発の旅程が多く照会されていることが分かります。国別ではアラブ首長国連邦が多くなっています。

図8:2021年7月中東・アフリカエリアの国別出発月別予約取り扱い数

続いて予約取り扱い数です。先月と同様の傾向となっています。アラブ首長国連邦、カタール、トルコが多く予約されています。これらの国々は出入国規制が比較的に緩和されていること、また世界的に減便がされている中で中東系航空会社の運航率が高く、ヨーロッパへの中継地点として機能しているという点も伺えます。

5. オセアニアの動向

図9:2021年7月オセアニアエリアの国別出発月別空席照会数

空席照会の月別の傾向としては他のエリアとあまり差異はありません。8月(翌月)出発旅程が多く照会されています。対前年比では40%と低調です。

図10:2021年7月オセアニアエリアの国別出発月別予約取り扱い数

続いて予約取り扱い数です。ニュージーランド行きで出発日が来年の旅程が多く予約されたこともあり、対前年比では90%、対前月比では約140%となっています。オセアニア行きの旅程については修学旅行等の団体の予約が入っているようですが、現在は渡航禁止が継続されている為、直近の予約、というところでは厳しい状況が続いています。

6. アジアの動向

図11:2021年7月アジアエリアの国別出発月別空席照会数

アジアエリアでは翌月出発の空席照会数と比べて当月出発である7月出発の空席照会数が多くなっています。業務渡航、帰国需要といったところで、他エリアよりも近い日付での動きがあるようです。

図12:2021年7月アジアエリアの国別出発月別予約取り扱い数

続いて予約取り扱い数です。こちらもあまり状況は変わっていません。国別では先月と同様、中国が圧倒的多数となっています。続いてインドですが、インドに関しては前月までの傾向と同様、キャンセルも多く、実際に渡航されている方は少ないものと思われます。

7. その他地域の動向

図13:2021年7月その他エリアの国別出発月別空席照会数

その他エリアです。こちらはほぼグアムの分析となっています。対前年比15%程度と先月に引き続き、非常に低調です。やはりレジャー旅行の回復にはまだ時間がかかるものと推察されます。

図14:2021年7月その他エリアの国別出発月別予約取り扱い数

続いて予約取り扱い数です。対前年比で3%程度、ほぼ取り扱いがない状況です。年末年始に向けて予約が入っている、ということも無さそうです。グアム行きレジャーの回復にはまだ時間がかかりそうです。

8. 世界のワクチン接種状況

図15:世界のワクチン接種状況
グラフが表示されない場合はこちら

7月末の世界のワクチン接種の状況をお伝えします。なお、表示対象をワクチン接種回数上位10ヵ国+日本、としております。中国のワクチン接種数は一時期ペースが鈍化したように見えましたが、その後勢いを取り戻し、増え続けています。アメリカは接種ペースが上がらなくなってきました。非常に緩やかな増加にとどまっています。日本の接種回数も順調に増加し、7月末時点で世界で6番目にワクチン接種回数の多い国となりました。

図16:世界のワクチン接種状況(人口100人当たりの接種回数)
グラフが表示されない場合はこちら

続いて7月末の人口100人当たりの接種回数です。こちらも表示対象をワクチン接種回数上位10ヵ国+日本、としております。こちらでも中国の伸びが目立ちます。今月末にはイギリスの接種率を上回るかもしれません。アメリカは人口100人当たりの接種数で見ても分かるくらいに接種ペースが鈍化しています。ヨーロッパ各国の接種率は順調に伸びていますね。日本のワクチン接種率もヨーロッパを上回る勢いで上がってきています。既に6月初旬のヨーロッパ諸国と同等の接種率となっています。

9. ワクチン接種証明書対象国の動向

2021年7月26日より受付が開始された海外渡航用の新型コロナワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)ですが、7月末時点では以下の5ヵ国において隔離処置の免除等が受けられます。

イタリア
オーストリア
トルコ
ブルガリア
ポーランド

※最新の状況は外務省 海外安全ホームページ(以下)にてご確認ください。
https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/certificationlist.html
ではこれらの国行き旅程の取り扱いについて見ていきましょう。

ワクチン接種証明書適用5ヵ国の予約取り扱い数(週次) ※7月31日時点

7月の1週目以降少しグラフが伸びているように見えますが、そこまで大きな影響は出ていません。実際の受付が始まった7月26日を含む週においても、さほど取り扱いは増えていません。やはり実際の予約に影響が表れるまではもう少し時間がかかりそうですね。また今後の対象国拡大(※)、日本帰国時の隔離措置免除等に期待が掛かります。特に日本帰国時の隔離についてはせっかく対象国への入国時に隔離が免除されても片手落ち感が否めません。 ※8月11日現在でスリランカ、スロバキア、セントクリストファー・ネービス、セントビンセント、タイ(一部地域)、ドイツ、パプアニューギニア、ベリーズ、ホンジュラス、リトアニアが追加になっていました。グラフでは7月31日時点での対象5ヵ国のみとしております。ご了承ください。

10.まとめ

7月は引き続き空席照会数が減少しましたが、予約取り扱い数については増加しました。業務渡航、帰国者の需要は一定して継続していることが伺えます。 レジャー旅行について、現時点では「年末年始」「ホノルル」行きのほぼ一点に希望が見えているような状況です。前章でご紹介しましたが、ワクチン接種証明書の受付が開始されました。電子化がされていない点や、帰国時の隔離措置が免除されないこと、対象国の少なさには少し物足りなさを感じるところですが、今後の改善・拡大も計画されているとのことです。兎にも角にも、運用が始まったという事実は業界としては歓迎できる状況かと思います。まだ予約取り扱い数への影響・効果は読み取れませんでしたが、特に帰国時の隔離措置免除と渡航警戒レベルの引き下げがいつ実施されるのか、期待しながらワクチン接種証明書による影響・効果を確認していきます。 ワクチン接種証明書の状況含め、いつから海外旅行に行けるようになるのか、この記事ではその兆候を逃さず捉え、データに基づき分析を今後も続けていきたいと思います。

INFINI LOOKUP編集部では記事に関するご意見ご感想を募集しています。また特に本記事においてはこういった切り口の分析が見たい、このポイントを深掘りして欲しい等のご要望をお聞きして記事作成に反映していきたいと考えております。ぜひページ下部の読者アンケートから、ご意見をお寄せください。

過去の記事一覧
・INFINI DATA Streamで見る世界 第1回【検索・予約への影響はいつから始まったのか】
・INFINI DATA Streamで見る世界 第2回【今検索・予約されているのはいつの旅程?】
・INFINI DATA Streamで見る世界 第3回【旅行会社カテゴリでの分析】
・INFINI DATA Streamで見る世界 第4回【9~11月の空席照会・予約取り扱い動向】
・INFINI DATA Streamで見る世界 第5回【2020年の振り返りと海外渡航復活のヒント】
・INFINI DATA Streamで見る世界 第6回【2021年4月号】
・INFINI DATA Streamで見る世界 第7回【2021年5月号】
・アメリカ行きの需要が回復の兆し、2021年5月の海外旅行動向【INFINI DATA Streamで見る世界 第8回 2021年6月号】
・ホリデーシーズンへの期待感が高まる、2021年6月の海外旅行動向【INFINI DATA Streamで見る世界 第9回 2021年7月号】

11.INFINI DATA Streamのご紹介

マーケティングデータ分析プロダクト。本稿で紹介させていただいたようなINFINIの検索回数、予約数等のデータを様々な角度から分析いただけるツールです。プラットフォームとしてDOMOを利用しており、INFINIのデータを分かりやすく可視化し、お客様のビジネスに直接役立てていただけます。ご興味のある方は担当営業、もしくはINFINI FORESTお問い合わせフォームよりお問い合わせください。

INFINI FOREST商品紹介

INFINI DATA Streamで見る世界 読者アンケート

記事に関するご意見ご感想を募集しています。
また、こういった観点での分析も見たい!等のご要望があればこちらからお知らせください。