地域の女性が輝ける国、バングラデシュに見る希望|旅行記
訪れた国々で出会った人々との会話から、その国に触れ「日本と比較してみる」―いつもそんなことを考えながら旅をしている。2019年9月、かつてから関心のあったバングラデシュを訪れた。旅の目的は世界に波及した地域経済の仕組み「グラミン銀行」のマイクロクレジットフアイナンス(小口融資)の状況をこの目で見ることであった。
「黄金のベンガル」バングラデシュ人民共和国の今
まずはこの国の紹介からしたい。バングラデシュ人民共和国は1971年パキスタンから独立を果たす。現在はイスラム教が主体国家であるが8世紀頃までは仏教が栄えた。いつの時代も肥沃なガンジス河の大地は多様な文化と産業を育み、人々はこの大地を「黄金のベンガル」と呼ぶ。
しかし現在、私たちのイメージするバングラデシュは「ロヒンギャの民族問題」・「貧国」・「サイクロン被害」ではないだろうか。しかし実際にこの目で見て、話して感じたこの国は全く異なる印象だった、首都ダッカは人口1,600万人が暮らす大都市。国の平均年齢23歳、経済成長率は年8%、インドに続けと政府が推進するIT産業、縫製産業はアジアの新たな拠点として日本の大手アパレルメーカーも参入。観光では長さ120kmの世界最長のビーチ「コックスバザール」など新たなアジアのラグジュアリーリゾートとしての整備が進められている。
世界最大のメガンクHSBCによると10年後の2030年にはGDP(国民総生産)世界ランキング26位になるとの予測もあり、世界中からの投資により市内の至るところでモノレールやマンション建設など急ピッチでインフラ整備が進められている。そして地方ではグラミン銀行の活動が経済を支えている。
マイクロクレジットフアイナンス(小口融資)がもたらす変化
今回の旅の目的であるグラミン銀行は、「農村の女性」を対象に無担保で小口融資(マイクロフアイナンス)を行うことで、資金がなくても地域で小ビジネスを始めるきっかけを作った特徴的な取り組みをしている。貸付は20ドル程度の融資からはじめ、その資金をもとに露店などでモノを仕入れ販売したり、小物を作って売ったり、主に資金回収が早い地域に根づいた事業に対して支援をする。そして元金は1週間後に返す。その後徐々に融資を増やすことができ、自分の見える範囲で着実に事業を組み立てることができる。
農村の女性は、はじめは「地域で何が出来るか」を考え次に「何かやってみよう」、そして少しの成功が次の事業への自信となり、より大きな活動にチャレンジでできる。そして女性の生活意識も変えていく。少額融資は、その地域に足りない身近な産業を育成することにもなり、地域内でお金が回る仕組みを創りだした。社会的な観点では地域に貧困家庭を作らない効果を生み出した。貸付に対する担保は必要ないが5人の推薦人が必要になる、いわゆる地域の信用=評判が担保になる条件がある。これは、「人と人のつながり」を意識する地域を創り出している。
私は融資を受けた女性宅を訪ねた。彼女の話によると「彼女のご主人はリキシャの運転手をしている」ある時ご主人がケガをしてしまい収入が途絶え「一時的に私が家計を助けなくては」とグラミン銀行の少額融資を受け、サリーを作り村で販売を始めた。農家の自宅では牛と暮らしていて、日中は家事や牛の世話、その合間に製品を作り販売を行うことができた。彼女は「お金を得ただけではなく女性の地位も向上した」と語った。グラミン銀行は地域の生活向上のみならず地域社会も変えた。
バングラデシュの旅の魅力
首都ダッカへの帰り道、古都ショナルガオンを訪れた。この地は13世紀さまざまな支配者に受け継がれベンガルの首都として政治・商業の中心地として、その後イギリスが支配、東インド会社により綿織物の生産地として19世紀まで繁栄を極めた。現在残る街並みは、19世紀当時のもので全長600mの区間にレンガ作りの建物跡がまるでタイムスリップしたように残る、その光景はまるで映画の世界に迷い込んでしまったようだ。
バングラデシュには世界遺産が3カ所あり、ガンジス河デルタに世界最大級のマングローブ林が広がる「シュンドルポン」には絶滅に瀕するベンガルトラが生息、ナチュラリストの憧れの地として知られている。そのほか「バハルプールの仏教遺跡群」、「バケルハットのモスク都市」など、多様な歴史を体感できる。
バングラデシュの旅の魅力とは何か?私たちの知らない歴史や自然があり、しかしかつての仏教国はどこか日本と繋がっているようにも思える。そして日本人が忘れかけている「人とのつながり」は「日本を元気にする」ヒントがあることだろう。
グラミン銀行の創始者のムハマンド・ユヌス氏は2006年ノーベル平和賞を受賞した。

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