出張者も便利に使える? ジャカルタ空港鉄道を使ってみた|旅行記

東南アジアの都市の中でも、道路渋滞が顕著なジャカルタ。新型コロナウイルス感染症のパンデミックで外出制限があった当時でこそ空いていたものの、今や従来の交通量に戻り朝晩は激しい混雑が見られます。その一方で、ジャカルタの主要空港CGK(スカルノ・ハッタ国際空港)へは道路でのアクセスしかなく、市内と空港の間は1時間以上かかることもザラ。
そこで登場したのが、空港鉄道 KAI Bandara(Bandaraは空港を意味するインドネシア語)。 今回は、ジャカルタ訪問の折に、この空港鉄道に乗り、実際に利用価値がどの程度あるのかを検証してみました。
(利用日:2022年12月14日 水曜日)
1. 空港鉄道の路線網
空港鉄道線は、ジャカルタ中心部の南東エリアにあるターミナル駅 マンガライ(Manggarai)と、SHIA駅(空港駅/Soekarno-Hatta International Airport)を、所要55分で結んでいます。 マンガライ駅は、日系工業団地なども多くある郊外のブカシ,カラワン方面への分岐駅でもあります。
このマンガライから空港へは、MRT(地下鉄)の接続駅である BNIシティ駅,そのほか2駅に停車してSHIAに達します。
BNIシティ駅は、ジャカルタの主要道路 スディルマン通りにあり、ホテルインドネシア ケンペンスキー,プルマンジャカルタ,在インドネシア日本大使館にもほど近く、市中心部とのアクセスがよいロケーションにあります。
途中、バドゥ セパールまでは、元JR東日本や東京メトロの車両が活躍する通勤通学路線 KAL Commuter(各駅停車)と線路を共用しているため、停車駅は少ないもののゆっくりと走ります。
今回はBNIシティ駅からSHIA駅までの乗車で、KAI Bandara を使ってみました。

2. BNIシティ駅できっぷを買う
電車の発車時刻はKAI Bandaraウェブサイト (Raillink) で見られるほか、Google Map の駅案内にも正しい時刻が反映していました。ウェブで前売り券をオンライン購入もできますが、今回は駅で購入することにしました。
BNIシティ駅から徒歩5分ほどのホテル(ホリディインエクスプレス ジャカルタ タムリン)に滞在しており、BNIシティ駅8:46発の列車に乗るため、余裕を持って8:15に出て駅に向かいます。
MRT(地下鉄)の開通に合わせて道路整備がされたため、しっかりとした歩道を歩き、駅に到着。 線路沿いにある案内板にそって細い道に入ると「本当に空港鉄道の駅があるのか?」というような殺風景な風景になります。とはいえ、人通りはそれなりにあるので、そのまま50mほど進むと、駅の入口がありました。
エスカレーターに乗ってコンコースに上がると、一般のKAL Commuterの駅とは一線を画すきれいな駅のコンコースが見えてきます。
券売機が6台あり、いずれもクレジットカード(Visa/Master)支払い専用です。現金でのきっぷ購入は一切できません。
空港駅までは 70,000.- ルピア(約700円)。
降車駅と乗車列車を選び、電話番号(日本のものでOK)を入力し、クレジットカードの決済が完了すると、バーコード付きのきっぷとクレジットカード利用明細書が印刷されて出てきます。列車は座席定員制(約270席)ではあるものの全席自由席のため、指定列車の空いている席に座る方式です。 他の乗客が困っていると、案内所の係員がすぐに駆け寄って手助けをしていたので、買い方がわからず困るということはないように感じました。
きっぷを購入後は左手の通路(右手はKAL Commuter用)を進み、KAI Bandaraの改札へ向かいます。入場は発車時刻の5分前から始まるようで、待合エリアで待つように案内されます。コンコースには飲料の自販機のほか、薬の自販機もあり、利用者の利便性が図られていました。




3. KAI Bandaraへ乗車
特にアナウンスもなく、自動改札の青テープが取り払われると入場開始。きっぷのバーコードを読み込ませて改札に入ります。
1番ホームから発車ですが、ここはKAL Commuterの Sudirman Baru 駅としても機能しているので、同じホームに2タイプの列車がきますが、空港ゆきは明らかに見た目が違うので間違うことはないでしょう。
ホームに降りると旧 山手線/埼京線の車両が入ってきましたが、これを見送って数分待っているとKAI Bandaraの専用列車が入ってきました。
空港駅は先頭車両側に改札があるため、後方車両のほうがやや空いているように見えました。


車内に入るとドア横のスーツケースラックの先に2列シートが並んでいました。自由席なので空いている座席を見つけて座ると、やや硬いものの座り心地は悪くない座席で、リクライニングもしっかりできゆったりとした座り心地です。
ただ、日本国外の列車でよく見る固定式の座席のため、客室内の半分は進行方向に対し後ろ向きに座ることになります。

4. 街の雑踏を抜け、SHIA駅へ
発車ベルが鳴ることもなく定時発車した列車は、ドゥリに到着。少し長めに3分ほど停車したと思ったら、来た方向へ向けて動き出し非常に焦りました。地図を見てればわかるのですが、この駅は終端式の構造で全列車がスイッチバックすることになります。少しだけ戻ると西へ向かうタンゲラン線に入り、ふたたび走り出します。
進行方向逆向きに座るのが苦手な方は、座席を移動する必要があるかもしれません。
多数のバイク,スクーター,クルマが待つ踏切を超え、住宅街を抜けると バトゥ セパール駅に到着。この時点で確認しても定時で到着でしたので、乗っていて安心できました。しかし、河川や沼地の脇を走るため、大雨の直後などは遅延や運休がないか運航状況を確認の上で利用をするほうが賢明かと思いました。

ここから先は空港鉄道の専用路線に入るため、急に走行速度が上がります。
大きなカーブを2度曲がると空港の滑走路が見え始め、その先にガルーダ・インドネシア航空グループの整備会社「GMF Aeroasia」の整備工場が見えてきます。
最後の右カーブを抜け、右手に見えるガルーダ・インドネシア航空の本社ビル/フライトオペレーションセンタービルを過ぎるとまもなくSHIA駅に到着します。
木に隠れて見えにくいかもしれませんが創業当時に使用していたDC-3機が、駅到着直前に見えます。この右側のビルが予約運賃本部で、みなさまのPNRへのHKは、ここから発信されています。
SHIA駅は、太陽光が差し込む開放的な雰囲気。
改札を抜けると、コンビニエンスストア大手 アルファマートの小型店舗 Alfa expressや、多くのベンチを備えた出発待合室があります。
空港から市内方面へのきっぷはここで購入できますが、やはりクレジットカード(Visa/Master)のみでの購入です。
エスカレーターで2階に上がれば、ターミナル1方面/ターミナル2,ターミナル3方面へそれぞれ向かう、無料シャトル列車に乗ることができます。また正面口の車寄せから無料巡回バスに乗っても空港ターミナルへ行けますが、シャトルが頻繁に運転されている時間帯は敢えてバスに乗る必要はないでしょう。


私自身は、プライベートで行ったジャカルタですが「せっかく近所まで来たのだから」と本社の予約運賃本部に手土産をもってあいさつに行き、普段はメール越しにしかやりとりがない担当者と親交を深めに行きました。そんなわけで、ターミナルゆきシャトル電車の画像はありません…。
5. 結論:出張などでも使えるのか
BNIシティ駅からSHIA駅までが、定刻通り走って所要47分。駅からターミナルまでのシャトルを考えると、ちょうど1時間。
ちなみにジャカルタ到着時(2022年12月12日 月曜日 18:50空港発→BNIシティ駅近くのホテル)はタクシーを利用し、高速道路経由で所要33分。夕方時間帯は市内→郊外の渋滞が顕著なため、一般道の一部で渋滞があったもののスムーズに行けました。少し高いが待ち時間が少ないタクシー(シルバーバード)で 高速道路代込みで3600円ほど。通常のタクシー(ブルーバード)を利用すれば乗車待ちに少し時間を要しますが、800円~1000円ほどは安くなります。
ということを考えると、荷物を持って door to door で動けるクルマ/タクシーのほうが、基本的には便利であるという印象はぬぐえず、利点として考えるならば ①混雑時間帯(朝:空港→市内方面/夕方:市内→空港方面)の渋滞がひどい時間帯 や ②何らかの事情で移動料金を安く抑えたい という点が挙げられるかな…という結論になりました。
ただ、BNIシティ駅前はクルマの停車もしやすいため駅前で迎えの車と待合せたり、MRT(地下鉄)で移動するのは非常にしやすいため、移動時間に余裕があったり、学生の方が旅費を抑えた旅行をされたい場合などでは使いやすいかと思います。
以上、ジャカルタ空港鉄道を使ってみた、でした。